10月28日、10月30日の巨大フレアと衛星・通信障害について
10/31 21:00 現在の状況についてまとめを作成しました
当時「通信総合研究所宇宙天気システムグループ」よりお届けした記事です
10/31 21:00更新
世界時10月29日20時49分(日本時間30日5時49分)に発生したX10の巨大な太陽フレア以降、
大きなフレアは発生していません。
GOES衛星
(NOAA)のX線データをご覧ください。
(c) NOAA/SEC
しかし、今回のフレアを発生させた活動領域は引き続き太陽表面にあり、非常に活発に推移する事が予想されます。
これは
SOHO衛星
(ESA,NASA)
MDIカメラによって撮影
された太陽面です。
太陽右側下よりに見える黒点が、今回の2つの巨大フレアを発生させた活動領域486です。
その上に見える、もうひとつの大きな黒点(活動領域488)と合わせ、
これらの領域が太陽の自転によって太陽面の裏側に回り込む11月5日頃までは引き続き警戒が必要です。
(c) SOHO (ESA & NASA)
GOES衛星
(NOAA)の放射線データによると、太陽放射線は30日にX10フレアに伴って上昇した後、
次第に下降を続けています。
10MeV以上のプロトンフラックスは100PFUを切っています。
(c) NOAA/SEC
30日のX10フレアによるCMEの様子です。
SOHO
(ESA,NASA)のLASCO C3カメラによって撮影されました。
写真中心の小さい白丸が太陽の大きさを表しています。
(c) SOHO (ESA & NASA)
29日 19:56UT
21:19UT
21:42UT
22:18UT
フレアが太陽正面で発生したために、CMEはほぼ地球方向を向いていました。
そのため、周囲に飛び散るガスは太陽を囲むように丸く広がっています。
続いて、
ACE
(NASA)が観測した太陽風の磁場(1番上の枠)と太陽風の密度(3番目の枠)、速度(4番目の枠)の変化です。
この図の左半分は、太陽風データは測定器の問題で正しい値ではないと思われます。
太陽風の測定器は図の中央付近で回復している様です。
(c) NOAA/SEC
世界時30日16時(日本時間31日1時)付近から太陽風磁場(1番上の枠)が大きな乱れを示しています。
太陽風データがありませんが、この時刻に惑星間空間衝撃波が到達したものと思われます。
衝撃波到達から9時間後に、速度(3番目の枠の黄線)の測定器が回復しています。
この時点で太陽風の速度は1200km/秒に達していました。これは通常の太陽風速度の3〜4倍という非常に大きな速度です。
衝撃波到達時の速度は更に高かったと想像されます。
太陽風の速度が高い場合、擾乱が発達し易くなります。
太陽風磁場は衝撃波到達後に大きくなり、しかも南に向いていました。
太陽風磁場が南に向くと、オーロラ嵐、磁気嵐などの擾乱現象を引き起こします。
衝撃波到達後、-10〜-20nTという強い南向きの状態が7時間にわたって継続しました。
そのため、磁気嵐がこの時刻に非常に発達したと考えられます。
現在は太陽風磁場は北を向いており、磁気嵐への影響は小さくなっています。
しかし、依然20nTという強度を保っていることと、太陽風速が1000km/秒と大変高いレベルにあることから、
太陽風磁場が南向きへ変化した場合には再び磁気嵐を大きく発達させると考えられます。
太陽風の速度が通常のレベル(500km/秒以下)に下がるまでは注意が必要でしょう。
沖縄の磁場データより、磁気嵐の進行状況を示します。
(c) CRL
最初のフレア・CMEにより世界時29日6時(日本時間30日15時)に始まった磁気嵐は、
世界時30日16時(日本時間31日1時)頃にはかなり減衰していました。
しかし、ここで二つ目のフレア・CMEによる惑星間空間衝撃波が地球に達し、再び磁気嵐が活発化しました。
世界時30日17時(日本時間31日2時)から世界時31日0時(日本時間31日9時)にかけて、-370nTに及ぶ磁場強度の変化を示しています。
これは太陽風磁場が大きく南を向いたことと、太陽風速度が非常に大きかった事が影響しています。
この時刻に、北海道などで肉眼による低緯度オーロラの観測報告があります。
太陽風データで記しましたが、この後、太陽風磁場が北を向いたため磁気嵐は発達を停止しました。
磁気嵐開始時点と比べて-300nTを越える磁場減少に達していましたが、世界時31日0時(日本時間31日9時)以降次第に増加しています。
現在、世界時31日11時(日本時間31日20時)時点で-100nTを切るほどに回復しています。
しかしながら、磁気嵐の回復過程で時折大きな変動を起こす事がありますので、引き続き注意が必要です。
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篠原 学(
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